年越しのトリノ
31日の大晦日、僕はコーヒー豆をぼりぼりと食べていました。
ホームステイ先のお父さんが、僕の胸ポケットにふざけてじゃらじゃらと注いだものです。
意外と美味しい美味しいんかい。
テレビでは歌謡祭が流れていました。
日本でいう紅白みたいなものでしょう。
過度な演出はなく、グループ分けもなく、歌手が順々に来て歌うだけ。
何故か2つのチャンネルで別々の歌謡祭が行われていました。笑
前にも少し触れましたが、イタリアはとにかくバンドが少ない。
ほとんどはソロ歌手で、曲もHIP-HOPとPOPを合わせたような、近年流行りの似通った音楽ばかりでした。正直退屈。
ご家族のみなさんは、しゃべりながらテレビを見ていました。時計を見ると23時ちょっと前。
僕もこのまま一緒にいようかな、とも思いましたが、やっぱりトリノの中心地がどんな年明けを迎えるのか見てみたい! という思いが断ち切れず、コートを羽織って、靴下、靴を履き、外へ。
「一人で行くの?」と聞かれ、「うん、一人だよ」と笑って玄関を出ました。
通りにはあまり人がおらず、しんと静まり返っていました。
あんまり外に出ないのかな、とちょっと不安に。笑
時々、爆竹が遠くから聞こえてきます。イタリアでは大晦日、年明けに爆竹を鳴らすのが習慣のようです。
途中、たまたま開いていたお店へ立ち寄りビールを購入。1€。
中心地まで行くまでの間に飲みます。
トリノの夜は電灯がちゃんと付いているので、街並みもよく見えます。昼間と雰囲気も違い、落ち着いた気持ちでゆっくりと歩くことができます。
聴いていた音楽は、Father John Misty。笑
やっぱり夜道にはこの曲が合う。
Father John Misty - God's Favorite Customer
Via Garibaldiへ到着。徐々に人が増えてきました。
上にかかる男女のシルエットは一体何なんでしょう。
通りの下を歩く10分間、ずーっと僕の頭上にはこれが。
Piazza Castelloに行こうかと思っていましたが、イベントがあっているらしく、入れず。笑
遠くから見てみたところ、何かモニタがあるようで。
さっきの歌謡祭のライブ中継でもしてたのかな。
さすが中心地周辺ということもあり、色んな人がわちゃわちゃといました。
僕と同じような顔をした、韓国や中国の人びと。老夫婦。やんちゃそうな若者たち。小さな子を連れたご家族。
若者は爆竹を投げまくり、人びとの足元に転がします。
気付いた人は耳をふさいでさっさと逃げていきますが、何も知らぬ人は突然足で鳴った破裂音に驚いていました。
僕も耳をふさぎながら歩きます。爆竹って何がいいんですかね?笑
さてどこに行こうか、と規制エリアを見ていると、どうやら入場制限はCastelloだけで、Piazza Vittoriaは行けるみたい。
じゃあそこへ、と歩き始めます。
その前にDuomo。 Duomo大好きや~。
道中も大変美しく。
ばばーん。着きました。Vittoria。
見にくいですが、空に浮かぶ光の粒は小さな気球。
僕のすぐ近くでも、袋の中で炎をともし、空にふわりと浮かべていました。
何て言うんじゃ、これは笑
そろそろかな、と時計を見ようとした瞬間、
周りから一斉に「Dieci! Nove!」とカウントダウンが始まりました。
僕も合わせてカウントダウンをしました。
そして、年明けです。
わあああ、と湧き上がる人びとと、どこかで上がる花火の音。
ハイタッチをしたり、抱き合う姿が見える中、きょろきょろと見渡しても、僕は一人。笑
まあいいや、と自分の現実を構うことなく、いえーい、と一人で口を開いていました。
今日だけの美しい風景を前にすると、一人でいることも何もかも、どうでも良いような気がしました。
背中を反り返すようにして空を見上げ、ゆらゆらと揺れる気球を眺めてみると、とても幸福な気分になりました。
ずっとずっとこの広場にいられそうでしたが、30分ほど経ったところで帰ることに。
Via Roma。やっぱり綺麗。
途中で通りかかった......名前は分かんないや。笑
帰路に見えるのは、同じように家々へ帰っていく背中ばかり。
年が明けたなあ、とここで実感しました。
トリノに残って良かった、と思えた夜でした。