【本・感想】AI vs. 教科書が読めない子どもたち / 新井紀子さん著【衝撃的な後編に思わず......】その②
こんにちは。りゅうです。
さて、先日ご紹介した
【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち
- 作者: 新井紀子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2018/02/02
- メディア: 単行本
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の後半について感想を書きたいと思います。
AIにできないことをする
本の前半では、現時点のAIの限界について触れ、
AIによってあらゆる仕事が置き換わるわけではなく、
AIは所詮計算機であることを示していました。
シンギュラリティの可能性はゼロに等しく、
人の心や文脈を読むような、感情や意味を理解することも不可能です。
しかし、AIが音声認識や画像認識でかなりの成果を上げていることは事実で、
また単純作業の自動化に貢献していることもまた事実です。
という現状を踏まえて言えることは、AIに仕事を奪われないためには、
AIにできないことを職にすることが一番の得策かも、ということです。
では、どういった種類の仕事が奪われにくいのでしょうか。
コミュニケーションを必要とする仕事
こちらも良く話題に上る話ですが、
現時点のAIにとって不可能な、会話や感情に関わる仕事は奪われにくいと言われています。
よく挙げられる例として、小説家という職があります。
前回の記事で触れたように、夏目漱石の文章を学習し、文章を生成しても、
ストーリーや感情的な文章がそこに含まれることは決してありません。
また、患者と触れ合いながら、心あるやり取りを必要とする理学療法士や医者、
小学校教員なども挙げられます。
以上のように、何でもかんでもAIに置き換わる未来の到来は、今のところ予想できません。
AIがこれらの職業を行うためには、現在の計算アルゴリズムと全く別のものが考案されなければ不可能でしょう。
ここまでの流れでいけば、
AIのせいで職を失う人はそう多くなく、我々の生活が突然脅かされることもなさそうですね。
一安心ひとあんしん、といきたいところなのです
が、
ここから筆者の新井さんは、ある部分に目を付けて、警鐘を鳴らしていきます。
AIにできない仕事を私たちはできるのか
ここからの展開が素晴らしいのですが、笑
新井さんはここで、
「人間にしかできない仕事を、維持できるだけの能力が果たして人間にあるのか?」
という問いを私たちに投げかけます。
コミュニケーションを必要とする仕事をやっていくためには、
勿論ですが、コミュニケーション能力が必要不可欠です。
コミュニケーション能力を適切に取るためには、
相手の言葉を理解すること、状況を上手く把握することなど、ある一定のスキルが求められます。
これらの認知能力の根本になるものは、読解力です。
言葉の理解もさることながら、目の前の状況を把握することも読解力に根付いたものです。
読解力とは、難しい哲学書などを理解することではなく、
論理的な文章を正確に理解して、内容を言い換えることや説明ができるか、といったことを指します。
こう説明すると、簡単そうなことに聞こえますが......
危機感を覚えるほどの実験結果
そこで新井さんは、コミュニケーションの根本となる読解力をはかるテストを
日本の学生を対象に行いました。
テストで使用されている文章は、特に難解なものではなく、
教科書に出てくるような、何かを説明するためのような、かたいけれど正確な文章でした。
例題もいくつか本の中で紹介されており、それを解きながら本を読み進めていくことになります。
そして実験結果が示されるのですが、その結果にあまりに大きな衝撃を受けてしまいました。
詳しい内容については、是非本を読んで頂いて、
僕と同じように衝撃を覚えて欲しいんですが、笑
読解力の欠如がテストによって明らかになり、さらに読解力の欠如が人びとの人生にどう影響を及ぼすのかといった考察がなされています。
数学や物理の問題で試されているのは、計算能力というより、
問題文を正しく理解することかもしれない、という興味深くて、今後の実験の成り行きが気になる意見も見られました。
まとめると、
人間とAIを決定的に区別するコミュニケーション能力ですが、
その根本にある読解力が、子どもたちのなかに教育によって十分培われているとは言えない
ということです。
とにかく語り切れないくらい衝撃を受けました
どこまで書いても喋り足りないんですが、上で述べたことの他に、
- 読解力が人生を左右するかもしれないこと
- 読解力と読書量や読書習慣に相関はない
といったことも本の中で言及されています。
AIの登場によって、私たちの生活は大きく変化していますが、
この現代社会の中で、人間らしさを保つための教育について今一度深く考えるべきなのかもしれない、という強い危機感を、本書を通して得ることができました。
読解力という能力に、今こそ私たちは注目すべきなのかもしれません。