停電

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ブログを書いている最中、部屋の明かりが一斉に消えた。停電であった。

 

悪い予感はしていた。

筋トレの後、牛乳を飲みにキッチンに行くと、午後7時にしては珍しく、誰も夕食を作っていなかった。

先に料理をしようか、それともさっさとシャワーを浴びるか、と一瞬考えたが、すぐにキッチンが空いていた理由が分かった。誰も使えないのだ。

誰かのびしょびしょの服が、洗濯機の中で低い音とともに回っていた。

はあ、と思わずため息が漏れる。今日の晩御飯は何時になるだろう、と僕は思いながら、とりあえず牛乳をラッパ飲みして部屋に戻った。浴室も誰かが使っていた。

 

とりあえず先にブログでも、とパソコンを立ち上げたが、十分もしないうちに、洗濯機の音に混じって、ピ、ピ、という何かを操作する音がした。電子レンジだ。

はて、と僕は首を捻った。どうして洗濯機を止めないままレンジを動かしているんだろう。

 

というのも、このシェアルームに引っ越してきた直後のこと、僕は何も知らずに、洗濯機とIHヒーターを同時に使って、家の明かりをふっと消したことがあったからだ。

同居人は、アパートの0階のブレーカーまで付き添いながら、少し厳しい口調で言った。

「洗濯機を使うときは、他の大きな電気機器は使えないよ。

IHもレンジも、ドライヤーも駄目だからね」

ごめんごめん、と僕はすっかり恐縮しながら謝った。

 

であるにも関わらず、

今日は誰かが洗濯機を止めずに、レンジを動かしている。洗濯機の音とレンジの音が混ざる。

どちらかが終わるのを待ちながら(恐らくレンジ)、誰かはタバコを吹かしていた。キッチンの電灯が、そのシルエットを浮かび上がらせていた。

タバコを吸う人間はこの家には一人しかない。紛れもなく、僕に注意をした彼であった。

 

そして、いっぺんに暗くなった。僕のパソコンが一気に眩しくなる。

ゴオゴオという洗濯機の音もしなくなった。誰も声を発しなかった。

ネットに繋がっていなくても、文章は打てる。僕はしばらくカタカタとキーボードを叩いていたが、待てよ、とあることに気付き、急いでパソコンを閉じた。

 

仕事から帰ってきたとき、この部屋で僕を迎えたのは、どこからやってきたのか分からないカナブンの羽根の音であった。

筋トレをする僕の頭上で、彼は狂ったように照明の周りをブンブンと飛んでいた。

 

今、この暗い部屋の中でパソコンを開いていると、一目散に彼はこのパソコンめがけて飛んでくるのではないだろうか。

虫が心底苦手な僕は怖くなって、パソコンを閉じ、携帯のライトも付けずに、真っ暗な部屋でじっと動かずにいた。

冷気が伝わらないように、シャッターを閉めているため、窓から外灯の光が差し込むこともなかった。

僕は机に肘をついたまま、じっとしていた。

 

誰かが家を出ていく音がして、それから一分も経たないうちに、部屋に明かりが戻った。

Wi-Fiもすぐに戻り、僕と同じように固まっていたYouTuberも動き始めた。何事もなかったように、ブレーカーの元へ行った彼も帰ってきた。

 

ああ、シェアルームめんどい。笑

日本で一人暮らしをしていた頃が懐かしい。こういうことがあると、ああ早く帰りたい、と思ってしまう。ほんとは帰りたくないはずなのに。